疲労とは何か──近藤一博氏の研究から読み解く新しい疲労医学

はじめに:疲労という現象の再定義
「疲れた」と感じることは誰にでもありますが、その“疲れ”は果たして単なる一過性の現象でしょうか?近年の研究により、疲労は単なる身体的な反応を超えて、免疫、脳、ウイルスが深く関与する複雑な生理現象であることが明らかになってきました。
その先駆的な研究を行っているのが、東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 疲労医科学研究部門 教授の近藤一博氏です。彼の研究は「疲労は見えない敵」であるという認識を覆し、科学的に可視化・測定可能な対象として捉える道を切り開いています。2025年4月20日には情熱大陸(MBS毎日放送)に出演。

本記事では、近藤教授の研究成果をもとに、疲労の定義からその生物学的メカニズム、さらに職場改善や安全衛生における応用可能性まで、幅広く解説します。
原著論文:Identification of a strong genetic risk factor for major depressive disorder in the human virome
プレスリリース:うつ病になりやすい体質が遺伝する仕組みを世界で初めて解明(2024年2月13日 東京慈恵会医科大学)
疲労の基本構造:分類と特徴
まずは、疲労の種類を明確にしましょう。
種類 | 説明 | 主な原因 | 回復法 |
---|---|---|---|
生理的疲労 | 日常的な活動により起こる一過性の疲労 | 身体活動、睡眠不足 | 休息、栄養、睡眠 |
病的疲労 | 慢性的で、休息しても改善しない | 慢性疲労症候群(CFS)、がんなど | 医療的介入が必要 |
精神的疲労 | 情動やストレスに起因 | 心理的ストレス、過重労働 | メンタルケア、環境調整 |
疲労は「ただの疲れ」ではなく、時に身体や精神に深刻な影響を及ぼすサインとなります。

疲労とHHV-6──ウイルスが鍵を握る?
近藤教授の研究の核心にあるのが、「疲労とウイルス(特にHHV-6:ヒトヘルペスウイルス6型)」の関係性です。
HHV-6と脳の炎症
近藤氏は、強い精神的ストレスや肉体的疲労がトリガーとなって、潜伏していたHHV-6が唾液腺で再活性化し、血流を通じて脳内に到達、炎症を引き起こすメカニズムを明らかにしました。
その証拠として、うつ病患者の約74%からこのウイルスの特異的な遺伝子(SITH-1)が検出され、これは非うつ群と比較して約12.2倍の有意差が確認されています(近藤ら、2020)。
このSITH-1は、嗅球という脳の一部に感染し、アストロサイトと呼ばれるグリア細胞を介して神経炎症を誘導します。これは単なる「気の持ちよう」とは無縁の、生物学的な疲労の根拠といえるでしょう。
疲労の客観的測定──唾液でわかる「疲労度」
さらに画期的なのが、「唾液による疲労測定」です。
近藤教授は、唾液中に含まれるHHV-6のDNA量を測定することで、疲労の度合いを“見える化”する手法を開発。これにより、これまで主観的な申告に頼るしかなかった疲労の評価が、数値として客観的に把握できるようになりました。
この技術は、産業医療や労働安全衛生の分野において、過労防止やうつ予防、休職リスクの早期察知といった新たな対策への応用が期待されています。

疲労が職場に与える影響
職場における慢性的な疲労の蓄積は、
- 判断力や集中力の低下
- 作業効率の悪化
- 労働災害のリスク上昇
- メンタル不調による離職や休職
といった深刻な結果を招きます。
特に立ち仕事や単純作業の繰り返し、長時間の同一姿勢といった現場では、身体的疲労に加え、精神的な疲弊も重なりやすく、より複雑な疲労問題へと発展する可能性があります。

対策と展望:人間工学・テクノロジーの力を借りて
疲労対策としては、以下のようなアプローチが有効です。
- 作業環境の最適化:照明・温湿度・騒音の調整、休憩導線の設計
- 人間工学的配慮:姿勢保持を助けるサポート機器の導入(例:着座支援機器)
- バイオマーカーの活用:HHV-6の唾液測定を取り入れた健康管理
近藤教授はインタビューの中で「疲労は予防できる時代に入った」と述べています(慈恵医大Webサイトより)。医学とテクノロジーが融合することで、これまで曖昧だった“疲労”が管理可能な対象へと変貌しつつあるのです。
まとめ──“疲れ”に科学の目を
疲労は単なる主観的な感覚ではなく、脳や免疫、そしてウイルスまでを巻き込む複雑な生物学的プロセスです。近藤一博教授の研究は、その可視化と客観評価を可能にし、産業現場や日常生活における健康管理の概念を大きく変えつつあります。
「疲れ」はもう曖昧なものではありません。科学がその正体を暴き、私たちがより健やかに働き、生きるための指針を与えてくれる時代が来ています。
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