腰痛による生産性低下は会社のコストである。あなたの会社は大丈夫?

腰痛がもたらす経済的・社会的影響とは?
腰痛は世界中で多くの人が抱える健康問題の一つであり、特に立ち仕事をする人々にとって深刻な影響を及ぼします。今回紹介する韓国の研究 「QUALITY OF LIFE AND PRODUCTIVITY LOSS COST ASSOCIATED WITH LOW BACK PAIN BY SEVERITY IN KOREA」 では、腰痛の重症度が生活の質(QoL)や生産性損失に与える影響を分析し、その経済的負担について詳しく調査しています。
研究の概要
この研究は、韓国において 19歳から65歳までの腰痛患者30人 を対象に行われました。患者は 「中等度の痛み(NRS 4-6)」 と 「重度の痛み(NRS 7以上)」 の2つのグループに分けられ、それぞれの生活の質や生産性損失コストが比較されました。
研究の主な指標として以下の2つが使用されました:
- 生活の質(QoL): 韓国版の EuroQol-5-dimension-5-level(EQ-5D-5L) を用いて評価。
- 生産性損失コスト: iMTA Productivity Cost Questionnaire(iPCQ) に基づき、プレゼンティズム(出勤しているが効率が低下する状態)や無給労働の影響を評価。
研究結果のポイント
1. 痛みの重症度が生活の質に与える影響
- 中等度の腰痛を持つ患者の EQ-5Dスコア は 0.754(標準偏差 0.0604)
- 重度の腰痛を持つ患者の EQ-5Dスコア は 0.654(標準偏差 0.0407)
- 0.10ポイントの有意な差(p<0.05) が確認され、痛みが増すほど生活の質が低下することが明らかに。


2. 生産性損失コストの比較
指標 | 中等度の腰痛 | 重度の腰痛 |
---|---|---|
プレゼンティズムによる損失コスト | $172 | $60 |
無給労働による損失コスト | $64 | $258 |
総生産性損失コスト | $237 | $318 |
- プレゼンティズムによる損失は中等度のグループの方が大きい ものの、
- 無給労働の損失コストは重度の腰痛患者で約4倍に増加 し、重度の痛みを持つ人は働くこと自体が困難になっていることを示唆。


3. 仕事のスタイルと腰痛の関係
- 参加者のうち 83.3%が女性 であり、
- 主婦(56.7%)が最多 であったことから、家事や介護などの無給労働が腰痛と関連している可能性。
研究から得られる示唆
この研究の結果から、
- 腰痛の重症度が上がるほど 生活の質は低下し、生産性損失コストが増加 する。
- 特に無給労働の影響が大きい ため、家事や介護などの役割を持つ人々にとって腰痛対策が重要。
- 効果的な腰痛管理(予防・治療) により、社会全体の経済的負担を軽減できる可能性。
立ち仕事をする人への対策とは?
この研究結果を踏まえ、腰痛を軽減し生産性を向上させるための具体的な対策を紹介します。
1. 職場環境の改善
- 姿勢をサポートするデバイス(例:アシストスーツ、腰サポーター)の導入
- 作業スペースの調整(作業台の高さ調整、座位と立位の切り替えなど)
2. 適切な休憩とストレッチ
- 長時間の立ち仕事では 定期的にストレッチや軽い運動 を取り入れる
- 休憩時の姿勢を工夫(腰への負担を減らす座り方など)
3. 腰痛予防のためのエクササイズ
- 体幹トレーニング により腰への負担を軽減
- 正しい姿勢の維持 を意識する
まとめ
韓国の研究により、腰痛の重症度が 生活の質と生産性損失に直接的な影響 を与えることが明らかになりました。特に、無給労働の影響が大きく、腰痛対策を講じることで 労働生産性を向上させ、社会全体の負担を軽減 することが期待されます。
腰痛は放置せず、適切な予防・管理を行うことが重要 です。立ち仕事をする人々や企業の担当者は、この研究を参考に 職場環境の改善や予防対策の強化 を検討してみてはいかがでしょうか。
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