林業における筋骨格系障害(MSDs)対策:エルゴノミクスの導入事例

林業における筋骨格系障害(MSDs)対策:エルゴノミクスの導入事例 立ち仕事のミカタ

1. はじめに

木材業界では、手作業による材料の取り扱いや繰り返し作業が多く、筋骨格系障害(MSDs:Musculoskeletal Disorders) の発生リスクが高いことで知られています。本研究では、日本の Kakimoto House におけるエルゴノミクス(人間工学)を活用した MSDs予防策 について、OWAS(Ovako Working Analysis System) という手法を用いた分析結果を紹介します。


2. 林業におけるMSDsの現状とリスク

(1) なぜMSDsが発生するのか?

木材産業に従事する労働者は、次のような作業によってMSDsのリスクが高まります。

  • 繰り返し動作(リピティティブワーク)
  • 不適切な作業姿勢(前屈・ねじり動作)
  • 重量物の運搬
  • 長時間の立ち作業

(2) Kakimoto HouseにおけるMSDsの実態

本研究では、Nordic Body Map(NBM)というアンケートを用いて、Kakimoto Houseの労働者の痛みや不快感を評価しました。結果は以下の通りです。

📌 腰痛の訴え:8名
📌 手首の痛み:9名
📌 膝の痛み:12名

この結果から、特に腰部・手首・膝 に負担がかかる作業環境であることが明らかになりました。


3. OWAS(Ovako Working Analysis System)による分析

OWASは、労働者の作業姿勢を分析し、負担の大きい動作を特定する手法です。OWASでは、背中・腕・脚の動きを記録し、作業ごとのリスクレベルを評価 します。

(1) OWASの評価結果

Kakimoto HouseでのOWAS分析の結果、次のようなリスク分類がなされました。

作業姿勢リスクレベル改善の必要性
背中を前傾させる姿勢高(レベル4)即時改善が必要
片腕を高く上げる姿勢中(レベル3)改善策を検討
脚を曲げて作業する姿勢高(レベル4)早急な対応が必要

この結果から、特に 前屈作業と重量物の運搬 に問題があることが分かりました。


4. エルゴノミクスを活用した改善策

OWASの結果を基に、Kakimoto Houseでは以下のような改善策が導入されました。

(1) 運搬用カートのデザイン変更

従来のカートでは、押す際に腰を曲げる必要があり、腰痛の原因 となっていました。そこで、新しいカートの設計が行われました。

📌 新カートの特徴高さ90cmに調整(腰を曲げずに作業可能)
軽量化により押しやすく
一度に多くの木材を運べる設計

(2) 作業台の高さ調整

作業台の高さを調整し、労働者が背中を曲げずに作業できる環境 を整備しました。

(3) 定期的なストレッチとエルゴノミクス研修

労働者が適切な姿勢を維持できるように、ストレッチや姿勢改善トレーニング を実施しました。


5. 新カート導入後の効果

新カート導入後、OWASによる再評価を行ったところ、以下のような改善が見られました。

📌 腰痛の訴えが8名→2名に減少
📌 作業効率が向上し、1時間あたりの運搬量が増加
📌 OWAS評価のリスクレベルが4→1に低下


6. まとめ

Kakimoto Houseでの研究は、OWASを用いたエルゴノミクス分析が、職場のMSDs予防に効果的 であることを示しました。

作業姿勢の分析とリスク評価 を実施
カートのデザイン改善 により負担を軽減
OWASによる再評価で、作業環境が大幅に改善

エルゴノミクスを取り入れることで、労働者の健康を守りながら、生産性も向上できる ことが明らかになりました。木材業界だけでなく、他の製造業や物流業界にも応用できる取り組みです。

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