歯科衛生士の身体負荷、考えてことありますか?座っても立ってもツラい…

はじめに
歯科衛生士は、長時間の同じ姿勢や繰り返しの動作が多い仕事のため、筋肉や関節に負担がかかりやすいと言われています。今回は、歯科衛生学生を対象に、座って作業する場合と立って作業する場合の姿勢の違いを比較した研究論文を紹介します。
研究の概要
この研究では、筋肉や関節の病気がない歯科衛生学科の2年生35名(全員女性)が参加しました。彼女たちは、模擬的な口腔環境で歯石除去の作業を行い、それぞれ座った場合と立った場合で姿勢の違いを調査しました。姿勢の評価には**Rapid Upper Limb Assessment(RULA)**というツールを使用しました。
研究結果の紹介
1. 図1:座っている姿勢と立っている姿勢の比較
この研究では、以下のような姿勢の違いが見られました。
- 座位(図1A):前かがみになりやすく、首や腕、手首に負担がかかる傾向。
- 立位(図1B):背筋は伸びやすいが、肩や腕、首に負担がかかりやすい。
どちらの姿勢にも長所と短所があり、どちらかが絶対に良いとは言えませんでした。

2. 表1:参加者の特徴
- 参加者のほとんど(85%)は18〜29歳。
- ルーペ(拡大鏡)を使っている人が多く(88%)、これが姿勢に影響を与える可能性も。

3. 表2:座った姿勢と立った姿勢の比較(RULAスコア)
- 座位の平均スコア:3.91(SD = 0.77)
- 立位の平均スコア:4.50(SD = 1.00)
- 統計的に有意な違いあり(p = 0.001)
このスコアは数値が高いほど体に負担がかかっていることを示します。つまり、立って作業すると、座って作業するよりも体にかかる負担が大きいことが分かりました。
また、68%の参加者が立っている方が負担を感じたと報告しました。しかし、座っている場合でも完全に理想的な姿勢とは言えず、どちらの姿勢も改善の余地がありました。

実生活での応用と考察
1. 正しい姿勢を学ぶことが重要
研究では、参加者は座っての作業方法についての指導を受けていましたが、立っての作業方法についての指導はありませんでした。そのため、立ち姿勢の正しい使い方を学ぶことが重要であると考えられます。
2. 座り姿勢と立ち姿勢を交互に使うべき
他の仕事では、「座る」と「立つ」をバランスよく組み合わせることで体の負担を減らせることが分かっています。歯科衛生士の仕事でも、一日中同じ姿勢ではなく、適度に座ったり立ったりすることで、体の負担を分散できるかもしれません。
3. 作業環境の最適化
- 椅子や作業台の高さを調整する
- ルーペやクッションを活用する
4. 姿勢のセルフチェックを取り入れる
- 作業中に自分の姿勢を写真に撮ってチェックすると、気づきが得られる。
- 定期的にストレッチを取り入れることで、体の緊張を和らげる。
まとめ
この研究では、座っても立っても歯科衛生士の作業には負担がかかることが明らかになりました。特に、立って作業する際の負担が大きいため、適切なトレーニングが必要です。
また、
- 68%の参加者が立位の方が負担が大きいと感じた
- 座位も理想的ではなく、改善の余地がある
- 座る・立つを適度に組み合わせることでリスクを減らせる可能性がある
といった重要なポイントが得られました。
今後の研究では、
- 座位と立位を交互に取り入れる効果を調べる
- 長時間の作業での姿勢変化と負担を分析する
- 歯科衛生士向けの姿勢改善プログラムを作る などの課題に取り組むことが期待されます。


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深谷 賢司 先生
綾部ルネス病院 副院長
脳・脊髄外科
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