縫製作業は長時間同じ姿勢をとることで首・肩・腰がツラくなる

縫製作業のは長時間同じ姿勢をとることで首・肩・腰がツラくなる 職場改善応援メディア 立ち仕事のミカタ

導入:仕立て職人の職業病とその影響

仕立て職人は、長時間同じ姿勢を維持しながら手作業を続けるため、**筋骨格系疾患(MSDs: Musculoskeletal Disorders)**に悩まされることが多い職業です。特に、インド・マハラシュトラ州アウランガーバード地区の仕立て職人を対象にした研究(Dr. Ganesh Rahane et al.)によると、首・肩・腰・手首といった部位に痛みや不調を抱えているケースが多く報告されています。

仕立て職人は座位または床に座った状態で長時間作業し、首を前に傾けたり、肘を肩より上や下に動かしたり、手首を内側に曲げたりといった非人間工学的な姿勢を取ることが多いです。その結果、慢性的な痛みや不調が蓄積し、最終的には作業効率の低下や身体機能の低下に繋がる可能性があります。


本研究の目的

本研究は、仕立て職人の作業環境を分析し、労働環境の改善や作業姿勢の最適化によるMSDsリスクの低減を目指しています。具体的な目的は以下の通りです:

  1. 仕立て職人の社会経済的状況を評価する
  2. 作業環境や職場の組織体制を分析する
  3. 仕立て職人が経験する身体的な不調や人間工学的リスクを測定する
  4. 作業負担や職務要求に関する意識調査を行う
  5. 作業姿勢の改善策を提案する

研究方法と分析手法

本研究では、119人の仕立て職人(男性58名、女性61名)を対象に、作業環境と姿勢分析を行いました。調査では、**オヴァコ作業姿勢分析システム(OWAS)およびコーネル筋骨格系不快感質問票(CMDQ)**を使用して、作業中の姿勢と不快感のレベルを評価しました。

主な評価指標
  • OWAS(Ovako Working Posture Analysis System)
    • 背中、腕、脚の動きを4段階のコードで評価
    • 63%の仕立て職人が背中に負担を感じていると判明
    • 50%がに問題を抱え、40%が脚部に負担を感じていた
  • CMDQ(Cornell Musculoskeletal Discomfort Questionnaire)
    • 仕立て職人の不快感が最も強い部位は首(7.81±3.7)、肩(9.3±6.2)、上背部(7.73±4.2)、腰(7.57±4.3)
    • 91%の仕立て職人が首の痛みを訴え、67%が日常生活に支障を感じていた
仕立て職人の側面図
source:
Ergonomics Analysis of Work-Related
Musculoskeletal Disorders in Tailors of
Aurangabad District, Maharashtra
後面から見た作業姿勢の分析
source:
Ergonomics Analysis of Work-Related
Musculoskeletal Disorders in Tailors of
Aurangabad District, Maharashtra
OWASスケールと仕立て職人のコード別分布
source:
Ergonomics Analysis of Work-Related
Musculoskeletal Disorders in Tailors of
Aurangabad District, Maharashtra

結果と考察

調査の結果、仕立て職人の間で筋骨格系疾患のリスクが高いことが確認されました。特に、首、肩、腰、手首などの部位に強い負担がかかっていることがわかりました。

主な原因
  1. 長時間の同一姿勢
    • 縫製作業中に長時間座り続けることが筋肉疲労を招く
  2. 不適切な作業姿勢
    • 前かがみの姿勢や腕の高さの不適切な位置取りが、筋肉への負担を増加させる
  3. 作業環境の非人間工学的要素
    • 調整不可能な椅子やテーブル、不適切な照明などが影響
  4. 休憩時間の不足
    • 休憩を十分に取らないことで、疲労の蓄積が加速

人間工学的介入による改善策

本研究では、仕立て職人の作業環境を改善するために、以下のような**人間工学的介入(エルゴノミクス・インターベンション)**が推奨されています。

1. 作業環境の改善
  • 調整可能な椅子の導入(背もたれと座面の高さ調整が可能なもの)
  • 作業台の高さ調整(適切な腕の位置を維持できるようにする)
  • 作業スペースの整理(快適な作業空間を確保する)
  • 照明の最適化(目の疲れを防ぐ)
2. 作業姿勢の指導
  • 定期的なストレッチの実施(特に首、肩、背中、手首)
  • 正しい座り方と姿勢を習慣化(背筋を伸ばし、肘の角度を90度程度に保つ)
  • 短時間の休憩を取る(作業ごとに小休憩を設けることで疲労を軽減)
3. 職場の意識改革
  • 仕立て職人向けのエルゴノミクス研修を実施
  • 経営者に対して作業環境改善の重要性を啓発

結論

本研究から、仕立て職人が直面する筋骨格系疾患のリスクを軽減するためには、人間工学に基づいた作業環境の改善と姿勢の見直しが不可欠であることが明らかになりました。特に、適切な椅子や作業台の調整ストレッチ習慣の導入短時間の休憩の確保といったシンプルな対策でも、MSDsリスクを大幅に軽減できる可能性があります。

今後、仕立て職人や他の立ち仕事に従事する人々がより健康的な作業環境を維持できるよう、職場全体での意識改革や設備投資が求められます。

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