【後半】物流工場のエルゴノミクス的対策 2025年問題に揺れる物流業界の働き方改革

物流工場のエルゴノミクス的対策 2025年問題に揺れる物流業界の働き方改革_後編_立ち仕事のミカタ

1. はじめに:エルゴノミクスの重要性と持続可能な職場環境

前半では、物流作業における筋骨格系の負担を科学的に評価し、腰椎(L5/S1)にかかる圧縮力が作業環境によって大きく異なること を明らかにしました。特に、ピッキング作業やパレット積み下ろし は、従業員の健康リスクを高める要因となっています。

では、どのような対策を講じることで作業負担を軽減し、持続可能な労働環境を実現できるのでしょうか?
後半では、エルゴノミクス的アプローチに基づいた職場改善策 を詳しく解説します。

作業プロセスにおける人間要素の理論的フレームワーク
source: Logistics Work, Ergonomics and Social Sustainability: Empirical Musculoskeletal System Strain Assessment in Retail Intralogistics

2. エルゴノミクスに基づく物流作業の改善策

エルゴノミクス(人間工学)は、作業環境の最適化を通じて労働負担を軽減し、生産性を向上させる ことを目的としています。本研究の結果を踏まえ、物流業務において以下の4つの改善策を提案します。


① 作業環境の見直し:負担の少ない動線と作業姿勢の最適化

物流倉庫では、作業者が前傾姿勢を取らざるを得ない場面が多く、これが腰部への負担を増大させます。そのため、以下のような環境改善が有効です。

改善策内容期待される効果
ピッキング作業の高さ調整商品の保管棚を腰の高さに合わせる前傾姿勢を減らし、腰の負担を軽減
作業エリアのレイアウト改善荷物の移動距離を短縮する不必要な移動を減らし、疲労を軽減
作業台の導入荷物の持ち上げ動作を減らす腰椎圧縮力の低減

特に、作業台やリフターを導入し、腰の高さで作業ができるようにする ことで、作業者の姿勢を改善し、腰部の負担を減らすことが可能になります。


② 補助機器の導入:アシストスーツや電動リフターの活用

物流業務では、重量物の持ち運びが避けられないため、補助機器の活用が有効な対策 となります。

◎ アシストスーツの導入

アシストスーツは、作業者の動きをサポートし、腰や膝にかかる負担を軽減する 装置です。特に、長時間のピッキング作業や荷役作業で効果を発揮します。

タイプ機能導入効果
電動アシストスーツモーターによる補助腰部の負担を約40%軽減
スプリング式アシストスーツバネの力で負担を分散軽量で長時間着用が可能

◎ 電動リフターの活用

  • 荷物の持ち上げ作業を補助し、膝や腰の負担を軽減
  • 特に、パレット積み下ろし作業で効果を発揮

実際に、研究対象となった倉庫でも、アシストスーツを試験導入したところ、作業者の疲労感が軽減し、ピッキング効率が向上 したとの報告があります。


③ 作業者の教育とトレーニング

適切な作業方法を指導し、作業者の身体的負担を軽減することも重要な施策です。

◎ 正しい持ち上げ動作の指導

腰痛を防ぐためには、膝を使った持ち上げ動作 を習慣化することが必要です。

誤った動作改善すべき点
腰を曲げて荷物を持ち上げる膝を曲げ、腰をまっすぐに保つ
荷物を遠くから持ち上げる荷物を体に近づけて運ぶ

◎ ストレッチ・筋力トレーニング

作業前後にストレッチを行うことで、筋肉の柔軟性を向上させ、ケガのリスクを軽減できます。また、腰部や体幹を鍛える筋力トレーニングを取り入れることも効果的です。


④ 休憩と作業スケジュールの見直し

長時間の単調な作業は、身体的な負担を増やし、疲労を蓄積させます。そのため、適切な休憩を設け、作業のローテーションを導入すること で、負担を分散させることが重要です。

施策内容期待される効果
定期的な休憩の導入1時間ごとに5分間のストレッチ休憩疲労回復・集中力維持
作業のローテーション30分ごとに作業内容を変更同じ姿勢による負担を軽減

特に、フォークリフト運転のように長時間座り続ける作業では、適度に立ち上がってストレッチを行う ことが推奨されます。


5. まとめ:持続可能な物流現場の実現に向けて

本研究では、物流作業における筋骨格系の負担を科学的に評価し、作業環境の改善策を提案 しました。エルゴノミクスを活用することで、作業者の健康を守りながら生産性を向上させることが可能 です。

◎ 物流現場の負担軽減策のポイント

✅ 作業環境を最適化し、腰に負担をかけない姿勢を維持
✅ アシストスーツや電動リフターを導入し、重量物の負担を軽減
✅ 作業者の教育とトレーニングを強化し、正しい動作を習慣化
✅ 休憩と作業ローテーションを導入し、疲労を分散

物流業界は今後も進化を続けますが、作業者の健康を守ることが、持続可能な労働環境の鍵となります。企業がエルゴノミクスに基づいた職場改善を進めることで、作業効率の向上と従業員の健康維持が両立できるでしょう。

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スネ部のロールクッションが体重の一部を優しく支えることで、足裏の荷重が軽減していることがデータから示されました。

スタビハーフの負荷軽減効果検証実験1
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