コールセンター業務におけるストレスと健康問題 米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が発表

コールセンター業務におけるストレスと健康問題 米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が発表 立ち仕事のミカタ
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はじめに

現代社会において、コールセンター業務は多くの労働者にとって避けられない職種となっています。しかし、その労働環境は高いストレスと健康リスクを伴うことが指摘されています。米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が発表した最新の研究「Evaluation of Job Stress and Work-related Health Concerns at a Telephone Call Center」では、電話対応業務におけるストレスと健康問題について詳細に分析されました。本記事では、その研究結果を解説し、職場環境改善のための提言を紹介します。

研究の概要

本研究は、ニューヨークにあるコールセンターの労働者からの要請を受けて実施されました。主な目的は以下の通りです。

  • 従業員の仕事のストレスレベルを評価する
  • 労働環境に関する心理社会的要因を分析する
  • 健康上の懸念を調査する
  • うつ症状や不安症状の有無を確認する
  • 労働環境改善のための提言を行う

調査方法

調査は匿名のアンケート形式で実施され、50人の従業員のうち43人が対象となりました。その結果、38人が回答し、約88%の回答率が得られました。

調査結果

1. 仕事のストレスレベル

本研究によると、全従業員が「仕事のストレスレベルが5以上」と回答し、そのうち46%が「ストレスレベルは最大の10」と評価しました(図1参照)。特に以下の要因がストレスの主な原因として挙げられました。

  • 過剰な業務量(61%)
  • 休憩時間の不足(47%)
  • 無礼な顧客とのやり取り(34%)
  • マイクロマネジメント(32%)
  • 通話時間の制限(21%)
仕事のストレスレベル分布
source:
Evaluation of Job Stress and Work-related Health Concerns at a Telephone Call Center
– U.S. Department of Health and Human Services Centers for Disease Control and Prevention National Institute for Occupational Safety and Health

図1: 仕事のストレスレベル分布 本研究では、全体の46%が最大レベルのストレスを感じており、特に業務量の多さと短い休憩時間が影響していることが分かりました。

2. 心理社会的要因と職場環境

従業員は仕事の負担の大きさを強く感じている一方で、仕事の裁量権が少ないことがストレス増加につながっていることが明らかになりました。

  • 仕事の自由度が低い(90%以上が「裁量がない」と回答)
  • 職場の安全衛生に関する情報共有が不足(19%のみが「十分な情報共有がある」と回答)
  • 同僚との関係は良好(70%以上が「同僚は協力的」と回答)
心理社会的要因と職場環境

3. 仕事満足度

調査対象の従業員の多くが仕事に満足しておらず、特に以下の点で不満を感じていました。

  • 仕事の尊重を受けていると感じる従業員は30%にとどまる
  • 昇進の見込みが少ないと考える従業員は54%
  • 給与が努力に見合っていると感じる従業員は31%
仕事満足度

4. 健康問題

コールセンター業務による健康への影響も明らかになりました。報告された主な健康問題は以下の通りです(図2参照)。

  • 頭痛・片頭痛(37%)
  • 空気環境の悪さによる健康影響(24%)
  • 筋骨格系の痛み(21%)
  • 不安症状(16%)
  • 睡眠関連の問題(16%)
  • 高血圧(ストレスが原因と考えられる)(13%)
仕事に関連する健康問題の発生率

図2: 仕事に関連する健康問題の発生率 このデータから、長時間の座位作業や過剰なストレスが、肉体的および精神的健康に影響を与えていることが分かります。

5. うつ症状・不安症状

  • 45%が中等度から重度のうつ症状を報告(図3参照)
  • 39%が中等度から重度の不安症状を報告
  • ストレスが強いほど、うつや不安のリスクが増加

図3: うつ症状の重症度分布 本調査では、多くの従業員がうつ症状を抱えていることが示されており、特に「仕事の裁量権がないこと」が強い影響を与えていることが分かりました。

改善策と提言

この調査結果をもとに、職場環境を改善するための提言がなされました。

企業への提言

  1. 業務量の見直しと適正化
    • 従業員の意見を反映し、通話件数の管理を最適化
    • 追加の人員を雇用し、業務負担を分散
  2. 短時間の休憩時間の確保
    • 通話の合間に6秒間の休憩を確保
    • 適切な休憩スケジュールを導入し、トイレや食事の時間を確保
  3. 作業環境の整備
    • エルゴノミクスに基づいたワークステーションの設計
    • 空調・照明の適正化
  4. メンタルヘルスサポートの強化
    • 定期的なカウンセリングセッションの実施
    • 精神的負担を軽減するための社内サポート体制の整備

従業員への提言

  1. ストレスマネジメントの実施
    • 瞑想や深呼吸などのリラックス法を取り入れる
    • 仕事中の短いストレッチを行う
  2. 適切な休憩と睡眠を確保
    • 仕事後のリラックスタイムを設け、リフレッシュを心がける
    • 就寝前にスマホやPCを避け、質の高い睡眠を確保

まとめ

本研究では、コールセンター業務における高いストレスとその影響が明らかになりました。企業は職場環境の改善を行い、従業員はセルフケアを意識することで、健康で持続可能な働き方が実現できます。本記事を参考に、働きやすい職場づくりを進めていきましょう!

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