立ち仕事による健康リスクとその対策:科学的エビデンスで読み解く

立ち仕事による健康リスクとその対策:科学的エビデンスで読み解く
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はじめに:立ち仕事の健康への影響は「足腰の疲れ」だけではない

多くの職場では、立ったまま作業を続ける「立ち仕事」が日常的に行われています。製造業の現場作業員、看護師、美容師、小売店のスタッフなど、長時間にわたり同じ姿勢で立ち続ける職種は少なくありません。
しかし、こうした作業姿勢が体に与える影響について、十分な理解と対策が行われていない現場もあります。

アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の研究によると、長時間の立ち仕事は腰痛、脚の痛み、心血管系の不調、妊娠合併症など、さまざまな健康リスクと関連していることが明らかになっています。


Evidence of Health Risks Associated with Prolonged Standing at Work and Intervention Effectiveness (Rehabilitation Nursing, 2014)

主な健康リスクと科学的根拠

1. 腰痛と筋肉の疲労

長時間立っていると、腰部や臀部(特に中臀筋)に負担がかかり、筋肉の共収縮(同時に複数の筋肉が収縮する状態)が増加します。これは骨盤の安定を保つための自然な反応ですが、長時間続くことで腰痛を引き起こす可能性があります。

中臀筋の共収縮と腰痛の関係

図1. 中臀筋の共収縮と腰痛の関係(Nelson-Wongら, 2008)

研究によれば、被験者の約40%が立ち作業の後に腰痛を訴え、中臀筋の左右の活動に偏りが見られることも報告されています。


2. 血管系への影響(下肢静脈瘤・静脈不全)

心臓から足へ送られた血液がうまく戻らないことで、脚のむくみや静脈瘤が発生しやすくなります。ある調査では、立ち仕事に従事する男性の約30%に、慢性静脈不全(CVI)の兆候が見られました。

立ち仕事と静脈疾患のリスク

図2. 立ち仕事と静脈疾患のリスク(Krijenら, 1997)


3. 妊娠中の健康リスク

妊婦が1日に8時間以上立ち仕事を続けると、早産や低体重児出産のリスクがわずかに上昇するという研究結果もあります(Mozurkewichら, 2000)。


効果的な対策と介入方法

研究では、次のような対策が健康リスクの軽減に有効であると示されています。

対策効果・ポイント
床マットの設置足の疲労感・不快感を軽減(Redfern & Chaffin, 1995)
着圧ストッキングむくみ・下肢のだるさの軽減(Kraemerら, 2000)
靴・インソール足裏への負担を分散し快適性向上
座り・立ちの切り替え可能な作業椅子腰部への負担を分散し、姿勢変化による血行改善
対策別の効果比較

図3. 対策別の効果比較


改善のための提案:現場での「姿勢の自由」がカギ

調査では、単に「立っている時間が長い」ことよりも、「動けない状態で立っている」ことが健康リスクに直結することがわかっています。したがって、以下のような視点から改善策を講じることが重要です。

  • 作業に「動き」を取り入れる(適度な歩行や体重移動)
  • 座る・立つの選択肢を作業者に与える
  • 足元環境を快適にするためのマットや靴選びの見直し

おわりに:職場改善は「動ける設計」から

長時間の立ち仕事は、見過ごされがちな「慢性的な負担」です。
今回紹介した研究では、具体的な健康リスクとその対策が科学的に示されています。
立ち仕事の現場では、単に「がんばる」だけではなく、「動ける環境づくり」を意識した職場改善が、労働者の健康と企業の持続的な成長の鍵となるでしょう。

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立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする前立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする様子

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負荷軽減の検証データ

実証実験において、スタビハーフによる体重分散効果が示されました。

立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。

スネ部のロールクッションが体重の一部を優しく支えることで、足裏の荷重が軽減していることがデータから示されました。

スタビハーフの負荷軽減効果検証実験1
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