疲労回復いつするの? オフの量と質を確保することの重要性 勤務間インターバル制度

近年、 インターネットやスマートフォンの進化により、私たちの働き方は大きく変化しています。特に、業務とプライベートの境界が曖昧になり、労働者の健康への影響が懸念されています。このような背景の中、労働者の疲労回復と健康維持のために、「勤務間インターバル制度」と「つながらない権利」の重要性が注目されています。
第134回労働政策フォーラム:ICTの発展と労働時間政策の課題 ─『つながらない権利』を手がかりに─ にて発表された「働く人々の疲労回復におけるオフの量と質の確保の重要性 ─勤務間インターバルと『つながらない権利』」労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 過労死等防止調査研究センター 久保氏の研究報告を基に解説します。
過労死:国際的な課題
「過労死(Karoshi)」という言葉は、2002年にオックスフォード英語辞典に登録され、国際的に認知されています。これは、日本の強い労働倫理によるストレスが原因で、過度の労働や職務関連の疲弊によって引き起こされる死亡を指します。この問題は日本だけでなく、世界的にも深刻な課題となっています。

世界的な長時間労働と健康リスク
世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)の共同調査によれば、2016年において全人口の約9%が週55時間以上働いており、長時間労働による虚血性心疾患や脳卒中による死亡者は推計で74万5千人に上るとされています。特に、長時間労働による健康リスクは世界的に問題視されています。

source: Global, regional, and national burdens of ischemic heart disease and stroke attributable to exposure to long working hours for 194 countries, 2000–2016: A systematic analysis from the WHO/ILO Joint Estimates of the Work-related Burden of Disease and Injury

source: Global, regional, and national burdens of ischemic heart disease and stroke attributable to exposure to long working hours for 194 countries, 2000–2016: A systematic analysis from the WHO/ILO Joint Estimates of the Work-related Burden of Disease and Injury
勤務間インターバル制度の意義
勤務間インターバル制度は、1日の勤務終了後から翌日の出社までの連続した休息期間を確保する制度です。欧州連合(EU)では、労働時間指令により最低11時間の休息期間を設けることが義務付けられています。これは、労働者が十分な休息を取ることで、疲労を回復し、健康を維持することを目的としています。
労働安全衛生総合研究所の調査では、IT労働者を対象に1カ月間の勤務間インターバルの実態を観察した結果、インターバルが11時間未満の場合、平均睡眠時間が約5時間となり、疲労が蓄積しやすいことが示されています。このことから、勤務間インターバルを確保することが、睡眠時間の確保と疲労回復につながると考えられます。



つながらない権利の必要性
ICTの発展により、労働者は勤務時間外でも業務連絡を受けることが可能となり、プライベートの時間にまで仕事が侵入するケースが増えています。これにより、労働者の疲労回復やメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、勤務時間外に業務から切り離される「つながらない権利」が重要視されています。
フランスでは2017年に「つながらない権利」が法制化され、企業は労働者が勤務時間外に業務連絡を断る権利を保障することが義務付けられました。この権利の導入は、労働者のワークライフバランスの向上と健康維持に寄与しています。
まとめ
労働者の健康と安全を守るためには、勤務間インターバル制度やつながらない権利の導入が重要です。これらの制度は、労働者が十分な休息を取り、疲労を回復し、健康を維持するための基盤となります。企業や社会全体でこれらの取り組みを推進し、健全な労働環境を築くことが求められています。