筋骨格系障害(MSDs)の対策にはマットとストレッチが有効か 縫製工場の立ち作業における効果検証研究を読み解く

筋骨格系障害(MSDs)の対策にはマットとストレッチが有効か 立ち仕事のミカタ
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はじめに

筋骨格系障害(Musculoskeletal Disorders: MSDs)は、世界中で約17億人が影響を受ける深刻な健康問題であり、特に立ち仕事を伴う職種ではそのリスクが顕著です。本記事では、インドネシアの縫製工場で実施された研究をもとに、抗疲労マットおよびストレッチの効果を検証し、最適な疲労軽減策を考察します。


研究概要

本研究では、インドネシアの縫製工場に勤務する112名の作業員を4つのグループに分け、それぞれ異なる条件のもとで5日間の実験を実施しました。研究手法としては、Nordic Body Map(NBM)を用いてMSDsのレベルを測定し、介入前後の変化を統計的に解析しました(paired T-test使用)。

グループ抗疲労マット使用ストレッチ実施結果(MSDs軽減効果)p値
T0MSDsの悪化が確認0.010
T1変化なし0.745
T2変化なし0.326
T3MSDsが有意に軽減0.006

結果として、抗疲労マットのみ、あるいはストレッチのみではMSDsの軽減効果は認められず、両者を組み合わせた場合にのみ有意な改善が見られたことが明らかになりました。


抗疲労マットの役割と限界

抗疲労マットは、PVCフォームなどの柔軟な素材で構成され、足底への圧力を分散し、血流の滞りを防ぐ役割を果たします。しかし、本研究の結果が示すように、抗疲労マット単独ではMSDsの有意な軽減効果は得られませんでした。これは、長時間の立位による筋肉の持続的な収縮が血流の循環不良を引き起こし、結果として疲労が蓄積されるためと考えられます。

実際、Redfern and Cham(2000)による研究では、硬い床面での長時間の立位作業は、下肢の筋肉疲労と腰部の不快感を顕著に増加させることが確認されています。

筋肉の弛緩と収縮
足裏荷重の圧力分布

ストレッチの有効性と課題

ストレッチは、筋肉の柔軟性を向上させ、血流を促進することにより、疲労軽減に寄与するとされています。しかし、本研究ではストレッチ単独での実施ではMSDsの有意な軽減は見られませんでした(p = 0.745)。これは、作業員のストレッチ実施状況やフォームの正確性が影響している可能性があります。

一方で、Gasibat et al.(2017)による研究では、適切なストレッチを行うことで、筋肉の粘弾性が向上し、血流が促進されることが示されています。従って、ストレッチの効果を最大化するためには、適切な指導のもとでの実施が必要と考えられます。


抗疲労マットとストレッチの組み合わせが最適な理由

本研究の結果から、抗疲労マットとストレッチの併用(T3グループ)がMSDsを有意に軽減する唯一の条件であることが明らかになりました(p = 0.006)。

この要因として、

  1. 抗疲労マットが足底への圧力を分散し、血流の停滞を防ぐ。
  2. ストレッチが筋肉の柔軟性を高め、血流を促進する。

という2つの相乗効果が挙げられます。特に、Winberg et al.(2022)による研究では、適切に設計された抗疲労マットは、静的立位作業時の下肢筋の活性化を促し、長時間の立ち仕事における負担を軽減することが報告されています。


実践的な提言

本研究の結果を踏まえ、立ち仕事の現場において実施すべき対策は以下の通りです。

1. 抗疲労マットの導入

  • 立位作業が長時間に及ぶ職場では、クッション性の高い抗疲労マットを使用する。
  • 定期的にマットの状態をチェックし、劣化したものは交換する。

2. 定期的なストレッチの実施

  • 2時間ごとに3分以上のストレッチを推奨。
  • 特に足首、ふくらはぎ、腰部のストレッチを重点的に行う。

3. 作業環境の改善

  • 適切な作業靴の使用(アーチサポート付きのものが推奨)。
  • 休憩時間の最適化(短時間の休憩を頻繁に取る)。

結論

本研究の結果から、抗疲労マットとストレッチを組み合わせることが、立ち仕事によるMSDsの最も効果的な軽減策であることが明らかになりました。企業や職場の管理者は、この知見を基に職場環境の改善に努めるべきです。

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