自動車工場における筋骨格系疾患(MSD)の実態調査と職場環境改善

はじめに
自動車製造業は、手作業による材料の取り扱い(MMH: Manual Material Handling)が多く含まれる業界の一つです。MMHには、持ち上げ、押す、引く、回転させるといった動作が含まれ、これらは筋骨格系疾患(MSD: Musculoskeletal Disorders)のリスク要因となります。
今回紹介する論文 「Work-Related Musculoskeletal Disorders among Workers Performing Manual Material Handling Work in an Automotive Manufacturing Company」 では、マレーシアの自動車製造工場で働く労働者を対象に、MMHによるMSDの発生状況を調査した結果 をまとめています。本記事では、研究の概要と職場改善のための対策について解説します。
筋骨格系疾患(MSD)の現状
研究の背景
- MMH作業を行う労働者は、MSDの発生リスクが高い と考えられています。
- MSDは、神経、腱、筋肉、支持構造(骨、靭帯など) に影響を及ぼし、長期的な健康問題につながる可能性があります。
- MSDは、企業の労働災害補償費の約40%以上を占めるとされ、生産性低下 や 医療コストの増加 の原因となります。
調査方法
本研究では、マレーシアの自動車製造工場に勤務する500人の労働者を対象に、以下の方法で調査が行われました。
- 身体部位症状調査(BPSS: Body Parts Symptoms Survey)
- 労働者にアンケートを配布し、どの部位に不快感や痛みがあるかを確認。
- 作業環境自己評価(Self-reported Workstation Conditions)
- 作業環境がどの程度快適か、改善すべき点はどこかを調査。
- 個別インタビュー
- 診療所に3回以上訪問した労働者を対象に、MSDの発生要因や作業環境の問題点をヒアリング。

調査結果と考察
1. MSDの発生率
調査結果から、最も多く報告されたMSDの部位は以下の通りでした。
身体部位 | 非常に不快 (%) | 極度に不快 (%) |
---|---|---|
下背部(腰) | 24.4% | 8.2% |
足首・足部 | 20.8% | 6.6% |
上背部 | 19.4% | 4.0% |
この結果から、腰痛(Low Back Pain: LBP)が最も多く発生している ことが分かりました。
特に、重量物を扱う作業が多い部署(車体組立・エンジン部門)では、MSDの発生率が高い 傾向が見られました。
2. MSDの原因
調査では、MSDの主な要因として以下の点が挙げられました。
① 作業動作による負担
- 労働者の多くが、以下のような作業を繰り返していました。
- 持ち上げ(Lifting)
- 押す・引く(Pushing / Pulling)
- 体幹の前屈(Trunk Bending)
- 頭部の持ち上げ(Head Lifting)
- ひねり動作(Twisting)
- 手を伸ばしての作業(Extended Reach)
このような動作を繰り返すことで、筋肉や関節への負担が蓄積し、MSDを引き起こす 可能性が高くなります。
② 長時間の立ち仕事
- 作業のほとんどが立ち仕事であるため、下肢(足首・膝・ふくらはぎ)に痛みを感じる労働者が多かった 。
- 長時間の立ち仕事は、血流の滞りや筋疲労の原因となり、足の腫れや痛みを引き起こす 。
③ 作業環境の問題
- 調査では、約**50%の労働者が「作業環境が騒音や振動の影響を受けている」**と回答。
- 特に、エアインパクトレンチなどの振動工具を使用する部署では、振動が手首や腕に与える影響が懸念される。
④ エルゴノミクス(人間工学)の認知不足
- 調査対象の労働者の約**76%が「エルゴノミクス(人間工学)について知らない」**と回答。
- 正しい姿勢や持ち上げ方を知らないため、不適切な作業姿勢が習慣化し、MSDのリスクを高めている可能性がある。
MSDの予防と改善策
本研究では、MSDのリスクを軽減するための具体的な対策として、以下の点が提案されています。
1. 正しい作業姿勢と持ち上げ技術の指導
- 背筋をまっすぐに保ち、膝を曲げて持ち上げる など、エルゴノミクスに基づいた作業指導を実施。
- 重量物を持ち上げる際は、できるだけ体に近づける ことで負担を軽減。
2. 作業環境の改善
- 高さ調整可能な作業台を導入し、無理な前屈や伸び上がり動作を減らす。
- 床材をクッション性のあるものに変更し、足腰への負担を軽減。
3. 定期的な休憩とストレッチ
- 1時間ごとに短い休憩を取り、ストレッチを行う ことで筋肉の疲労を軽減。
- 足を上げる休憩(10分間)を導入し、血流改善を促進。
4. 職場のエルゴノミクス教育
- 労働者にエルゴノミクスに関するトレーニングを実施し、MSDの予防策を周知。
まとめ
本研究では、マレーシアの自動車製造業において、MMH作業によるMSDの発生率が高いこと が明らかになりました。
特に、腰痛が最も多く、次いで足首・上背部に痛みを感じる労働者が多い という結果が示されています。
作業環境の改善やエルゴノミクス教育を強化することで、MSDの発生を抑え、労働者の健康維持と生産性向上につなげることが重要です。
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