長時間の立ち仕事に、足元からの快適対策を:疲労軽減マットの科学的効果とは?

長時間の立ち仕事に、足元からの快適対策を:疲労軽減マットの科学的効果とは?
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導入:足元の「見えない疲労」に注目

医療現場や工場、スーパーのレジなど、長時間の立ち作業が求められる職場では、足の痛みや腰の不調が慢性的な悩みとなりがちです。「とにかく立ちっぱなしで疲れる」「帰るころには足がパンパン」という声は、どの現場でも聞こえてきます。

そんななか、「疲労軽減マット(アンチファティーグマット)」と呼ばれる足元の対策ツールに注目が集まっています。今回は、ヒューマンファクター工学の観点からこのマットの効果を検証した研究を紹介します。


疲労軽減マットは本当に効果があるのか?

実験の概要

ミシガン大学のWiggermannら(2013)は、4種類の市販疲労軽減マットと、硬い床(リノリウム床)を比較し、被験者が4時間立ち続けた際の「主観的な不快感」と「体の動き(重心移動)」を評価しました。

  • 参加者:10名(男女半々)
  • 評価項目
    • 主観的不快感(足・脚・腰など8部位)
    • 足裏の圧力センサーによる体重移動(weight-shifting)頻度
    • 中心圧の移動(COP excursions)

主な結果とポイント

① 足の不快感はマットで軽減される

図1のように、最も柔らかいマット(A)は、硬い床と比べて足の不快感を有意に低下させました。

各床材での足部の不快感(4時間後)
各床材での足部の不快感(4時間後)
Effects of Anti-Fatigue Mats on Perceived Discomfort and Weight-Shifting During Prolonged Standing

図1:各床材での足部の不快感(4時間後)
※最も柔らかいマットAで有意に不快感が低下(p<.05)

一方で、マット同士の間では有意な差が出なかったため、「マットを使うこと」自体に意味があると結論づけられます。


② 重心移動の頻度が「不快感のサイン」に

主観的な不快感よりも注目すべき指標として挙げられたのが「体重移動の頻度(weight-shifting)」です。

  • 重心移動の頻度が多い=不快感が高い
  • 特に硬いマットでは、頻繁な体重移動が観察されました
各床材での体重移動の頻度(10分あたり)
各床材での体重移動の頻度(10分あたり)
Effects of Anti-Fatigue Mats on Perceived Discomfort and Weight-Shifting During Prolonged Standing

図2:各床材での体重移動の頻度(10分あたり)
※硬いマットDで有意に頻度が高い(p<.01)

つまり、作業者が無意識に足踏みや体重移動をしている場合、それは「足が疲れているサイン」と捉えることができそうです。


③「姿勢の変化」がしやすい床ほど快適

前後・左右の重心の揺れ(中心圧移動)も、不快感と相関がありました。

  • 柔らかいマットほど、体が自然に動きやすく、負担の分散が可能
  • 特に**前後方向の動き(AP方向)**では、硬い床での移動量が大きく、筋疲労を示唆

導入のヒント:体の動きに着目した職場改善を

この研究からわかるのは、「主観的な不快感」は人によって差が大きく評価が難しい一方で、「体の動き」は比較的客観的に不快のサインを捉えられる、という点です。

たとえば、以下のような改善が考えられます:

  • 作業中に頻繁に足踏みをしている人が多い現場 → マットの導入を検討
  • スタンディング作業が長時間続く職場 → マット+作業ローテーションの仕組みづくり
  • 導入マットの効果を検証したい → 重心移動を動画やセンサーで観察

まとめ:まずは「立ち続けること」のリスクを知ろう

疲労軽減マットの導入は、立ち仕事における身体的負担を和らげる有効な一手です。ただし、最も効果が大きいのは「立ち続ける時間を減らすこと」です。マット導入に加えて、以下のような働き方改革も並行して検討するとよいでしょう。

  • 作業の座位化(可能な作業は椅子で行う)
  • 立ち姿勢と座位の交代勤務
  • ストレッチ休憩の導入

働きやすい職場づくりは、足元から始まります。

立ち姿勢の負担軽減
「スタンディングレスト」

という新発想!

スタビハーフは、長時間の立ち仕事による足や腰への負担を軽減するために開発されたスタンディングレストです。スネやヒザをやさしく支えることで体重を分散し、足裏への負荷を大幅に軽減。作業中の疲労を和らげ、快適な姿勢をサポートします。

立ち作業の負担軽減デバイス

アルケリスは立ち姿勢の負荷軽減デバイスを販売中です。職場環境に合わせて、疲労軽減ジェルマットスタビ ハーフスタビフルから選ぶことができます。立ち仕事の身体疲労を軽減し、働く人に選ばれる職場づくりをサポートします。

製品写真(スタビハーフ)

立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする前立ち仕事の椅子「スタビハーフ」に座って仕事をする様子

身体負荷を軽減する

立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

立ち姿勢では体重負荷が100%足裏に集中して、足や腰に負担がかかります。スタビハーフは体重を分散して支えるため、足裏への負荷を最大33%軽減することができます。

負荷軽減の検証データ

実証実験において、スタビハーフによる体重分散効果が示されました。

立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。

スネ部のロールクッションが体重の一部を優しく支えることで、足裏の荷重が軽減していることがデータから示されました。

スタビハーフの負荷軽減効果検証実験の様子。立ち姿勢とスタビハーフ使用時における体にかかる荷重を、圧力分布センサを用いて計測したところ、スタビハーフの使用により足裏の荷重が最大30%程度軽減することが明らかになりました。
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