【調査報告】地下鉄職員の67%が筋骨格系障害に苦しむ──日本の鉄道業界にも迫る“立ち仕事リスク

地下鉄職員の67%が筋骨格系障害に苦しむ日本の鉄道業界にも迫る
“立ち仕事リスク” 立ち仕事のミカタ
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導入:都市インフラを支える人々の「見えない負担」

都市の安全と快適な移動を支えている鉄道職員。その仕事は多くの人の目に触れる一方で、身体的な負担についてはあまり語られることがありません。

2025年にインド・バンガロールで発表された研究によると、地下鉄職員の67%が仕事に起因する筋骨格系障害(WRMSD)を抱えていることが明らかになりました。この問題は、日本の鉄道職員にとっても他人事ではありません

本記事では、その調査結果を紹介しながら、日本国内の課題や対策のヒントを探ります。

本調査の詳細は、以上のリンクで原著論文をご覧ください。


調査の概要:バンガロール地下鉄職員100人を分析

  • 対象者:インド・Namma Metro勤務の駅職員100名(20〜45歳)
  • 評価ツール
    • REBAスコア(Rapid Entire Body Assessment:姿勢負荷評価)
    • ICF(国際生活機能分類)
    • WHO-QOL-BREF(生活の質評価)
  • 主な業務内容:1日8時間以上の立ち仕事、反復作業、無理な姿勢での業務など

調査結果:驚くべき“身体の悲鳴”

◆ 姿勢負荷の評価(REBA)

リスクレベル対象者の割合
低リスク(2–3点)15%
中リスク(4–7点)67%
高リスク(8–10点)17%
非常に高リスク(11点以上)1%

REBAとは?
作業中の姿勢から筋骨格系リスクを評価する国際的なツール。スコアが高いほど身体への負担が大きいとされます。


◆ 活動制限の実態(ICF分析)

特に困難を感じた動作は以下の通り:

  • 立ち姿勢の維持:84%が中〜重度の困難を報告
  • しゃがむ動作:66%が中等度以上の制限
  • 階段の昇降:83%が困難と回答
  • 長距離歩行:90%が何らかの支障あり
Credit: Liam Burnett-Blue (Unsplash)

◆ QOL(生活の質)の評価

  • 年齢が上がるほど活動制限が軽くなる傾向
  • QOL(身体・心理・社会・環境)の各要素は相互に強い関連性
  • 男女間でのQOL差は見られず

この結果からは、経験を積んだ年長者が動作の工夫や負担軽減法を自然と身に着けている可能性が読み取れます。


日本の鉄道職員も例外ではない:共通する労働環境と課題

この研究結果は、日本の鉄道現場にも強く当てはまります

◆ 共通する労働負荷

日本の駅係員や車掌も、以下のような動作を日々こなしています。

  • 長時間の立ち作業(改札・案内・ホーム業務)
  • 発車・停車業務時の緊張を伴う監視
  • 重い荷物の運搬、車椅子介助、転倒防止対応
  • 一部業務での不自然な前屈姿勢やねじり動作

これらは、まさに今回の調査で“負荷が大きい”とされた姿勢や動作と一致します。

◆ 日本でも高まるWRMSDへの危機感

厚生労働省や各鉄道会社の安全衛生委員会でも、腰痛や肩こりによる労災申請や離職リスクの増加が問題視されています。特に高齢化が進む中で、ベテラン職員の体力的負担が課題となっています。


図解:REBAスコア分布と活動制限レベル

MSDのリスク評価
Source: Prevalence of activity limitation due to work related musculoskeletal disorder in long standing metro station workers

上のグラフは、調査対象者のREBAスコア分布を示したものです。**中リスク以上が85%**を占め、現場での作業がいかに体に負担をかけているかが可視化されています。


結論:今こそ「立ち仕事」の在り方を見直すとき

今回の研究は、長時間立ち仕事を続けることで生じる身体的・心理的負担を科学的に裏付けました。これはインドに限らず、日本の駅係員、警備員、販売員など多くの立ち仕事従事者に共通する課題です。

◆ 改善のための具体策

  • アシストスーツや姿勢サポーターの導入
  • 作業姿勢・休憩のマネジメント教育
  • 勤務時間の見直しと休憩の確保
  • ジョブローテーション制度の導入
  • 人間工学に基づいた作業空間の改善

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スタビハーフの負荷軽減効果検証実験1
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