はじめに

カリフォルニア州にある大規模な物流施設において、労働者の筋骨格系障害（MSDs）が問題となっています。本記事では、米国国立労働安全衛生研究所（NIOSH）が実施した作業環境の人間工学的評価の調査結果を基に、物流業務におけるMSDsのリスク要因や改善策を解説します。

調査の概要

この調査は、物流機関の安全管理部門の要請により実施され、作業環境の人間工学的リスクとそれに伴う筋骨格系障害の発生状況を評価しました。対象施設では1,300名の従業員が働いており、ピッキング、パッキング、保管、積み下ろしなどの業務を担当しています。

調査方法:

• 作業現場の観察と作業姿勢の分析
• 作業台や作業環境の測定
• 39名の従業員へのインタビュー（業務内容、健康状態、職務履歴）

調査結果

1. 作業環境の人間工学的課題

• 調整可能な作業台の不足：作業台の高さが固定されているため、作業姿勢が悪化。
• 耐疲労マットや調整可能な椅子の欠如：長時間の立ち作業による疲労や腰痛のリスクが増大。
• 高所での作業負担：作業物の配置が肩より高い位置にある場合、肩や首への負担が増加。

2. 主な身体的影響

• 背中と肩の痛みが最も多い
  • 腰痛：主に箱の荷造り、荷解き、積み下ろし業務で発生。
  • 肩の痛み：物の仕分けやパッキング作業で発生。
• MSDsの発症率が高い
  • インタビューを受けた従業員の41%が「業務に起因する痛み」を報告。
  • うち11名が腰痛、4名が肩の痛みを経験。
  • 診断を受けたMSDの例として、筋肉の炎症や腱炎、回旋腱板損傷（肩の腱断裂）などが報告された。

改善策と推奨事項

1. 作業環境の改善

• 作業台の高さ調整機能を導入：
  • 立ち作業用の作業台は高さ38〜47インチに調整可能にする。
  • 座り作業用の作業台は27〜36インチに調整可能にする。
• 耐疲労マットの設置：
  • 0.5インチ以上の厚さがあるマットを導入し、立ち作業の負担を軽減。
• 椅子の交換と調整可能な設備の導入：
  • 背もたれや高さ調整が可能な椅子を導入。
  • 長時間の立ち作業を要する業務には適切な休憩設備を提供。

2. 労働者の健康モニタリング

• 従業員の健康状態を定期的にチェックし、早期対応を実施。
• 健康管理のためのトレーニングや啓発活動を強化。
• 労働者が作業環境に関する意見を共有できる仕組みを導入（例：エルゴノミクス委員会の設置）。

3. 業務のローテーションと作業負荷の分散

• 同じ筋肉群を繰り返し使うことを避けるため、業務ローテーションを実施。
• 荷物の持ち上げ作業では、二人一組で作業するよう推奨。
• 補助具（フックや昇降装置）を活用し、負担を軽減。

まとめ

この調査は、物流施設におけるMSDsのリスクを明確に示し、具体的な改善策を提案しました。作業環境の改善、労働者の健康管理、業務ローテーションの導入によって、物流業界における職場環境の向上が期待されます。

関連リンク

• CDC/NIOSH：作業環境の人間工学的改善
• OSHA：安全管理の推奨プラクティス

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